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2005年12月22日

味音痴疑惑

先日、使っているRSSリーダーに気になる見出しが躍っていた。
曰く、『「缶入りトマトスパゲティ」ってなに?』なるお題目のエキサイトの記事らしい。
普通に考えれば、「缶詰のトマトパスタね。はいはい」で納得して終了の何気ないこの一文、私の迷走気味の記憶回路はこのテキストにただならぬご縁を感じ取り、一時手を止め、その文章に紐付く記憶の検索を始めたのです。

・・・それは忘れもしない中学3年の修学旅行、オーストラリアへのホームステイの時のこと。
他の同級生は2人1組で各ホストファミリーのもとへ行く中、私は偶然、「2人は体力的に世話できない」との理由で1人暮らしの老婦人のもとに1人でホームステイすることになりました。
そしてそこで私は「彼」に出会っていたのです。
チョコペーストが塗られているのだと勘違いして食べて大いにびっくりしたベジマイト・トースト(えぐみと塩気を集中強化した味噌みたいな味)、合同で開いてもらったウェルカムパーティーの見事なまでに素材の味しかしないパサパサのTボーンステーキ(当時は自分で塩コショウを振るのは出してくれた人に失礼だと思ってガマンして食べた)、お弁当として作っていただいたどピンクの砂糖でコーティングされた食パン(これは純粋に色に驚いた)、などなど、内角ギリギリデッドボール気味の食生活にヤラレていた私にとって感動的においしく感じられた食品、それが彼、「缶入りトマトスパゲティ」(を上に乗せて焼いたトースト)だったわけなのですね。
濃い目のリプトンの紅茶と一緒に朝ごはんとして頂いた時のおいしさは、人生序盤戦における食べ物インパクトのベスト10に入っちゃおうかというほどのもの。
帰国後、折を見て探しては見たものの、以来十年、日本でそんな食べ物を見かけることはついぞなかったのだけれども。
意外なトコで再開できちゃったのです。
「エキサイトのライターさん、エライ!」などと思って期待と嬉しさで胸を膨らませながらそのリンクをクリックしてみると。


・・・・・・読んでいただいたほうが早いかも。
こんな感じの書かれよう。

要するに、おいしくもないらしいのです。
書かれていることを読んでみると、確かに理屈ではおいしくなさそう。

ちょっと、いやかなり、ショック。
あんなにおいしかった記憶しかないのに。
でも、確かに良く考えてみると、他にオーストラリアでおいしかったものって、ボーリング場で食べた皮付きのフライドポテトくらいのもので、そう考えるとなんだか当時の自分の食体験について、おいしい/まずいの基準に自信がもてなくなってくる。
そもそも、パスタをパンに乗っけてさらに焼いちゃうというのは、少なからずチャレンジングな調理法にも思えるわけで。

そうやって、自分が「おいしい」と思っていたものが実は「おいしくはないよ」と言われているものだった、という自分/一般の認識のギャップに直面したとき、思い出したのは「ウミガメのスープ」(googleで調べると色々出てくる??)のクイズ。
あれはモラルの介在する種類の話だからまた一段とショッキングだし、これは個人の主観的な感覚の問題に戻ってきてしまうんだけれども。
それでもやっぱり自分の古い記憶が、世の中の一般値に合致しないというのはなんだか意外なほど納得できないものです。(笑)

そしてそれは多分、味覚という肉体と密接に絡む生っぽい感覚についてのものであるからこそ、身体の伴った固体として暮らす自分の中では今後とも「おいしいんだ!」ってことにしておきたいのかなぁ、などと思いながら、今度、輸入食材店に行くことがあったら、きっと「缶詰トマトスパゲッティ」を探しているであろう自分を想像するのです。
そしてまた、その「缶詰トマトスパゲッティ」を食べて鮮明に思い出すかもしれない、あのホストマザーの老婦人の、もはや思い出せもしない顔と、なんとかおぼろげに覚えている地毛か白髪かもわからない見事な銀色の髪のことも、考えてみるのです。
その節は、本当にお世話になりました、的に。

投稿者 joypod : 2005年12月22日 04:53

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